●素材別・部位別の注意点とそのポイント
◆屋根の塗替え(カラーベストコロニアル,セメント瓦,モニエル瓦)
屋根は陽射し・雨・夜露をマトモに受けるため,たいへん条件が厳しいところです。
ある方から教えていただいた職業上の実験によると,(神奈川県某所での)屋外曝露の結果として,
南側90度の面にかかる負荷を「1」とすると南向き35度の面にかかる負荷は「2.5」に相当する
のだそうです。
これは,単純に言い換えると,外壁に塗ったら10年もつ塗料を屋根に塗った場合4年しかもたない
ということですから,屋根の塗替えには特に,十二分な下地調整の上で,なるべく上等な塗料を
使用したいものです。
先日,某塗料メーカーの上層部の方が当店にお見えになったので,「カタログにこう↑書いたら屋根用高級塗料の
売上げが伸びると思いますよ。」と申し上げたところ,メモされておりました。
■ カラーベストコロニアル
屋根の素材は地域差がたいへん大きいようで,当店の営業範囲である神奈川・東京の住宅地では
圧倒的にカラーベストコロニアルの屋根が多いです。
この屋根材に関しては「塗替えて防水性を高めましょう」というような単純な意見の他に,
「ダメになったら葺き替えるものであるから塗り替える必要は無い」という意見もあり,
そのあたりのことは別のページ↓
「塗替えQ&A/Q.31/カラーベストコロニアル屋根の塗替えは必要か?」
に書きましたので,ここでは塗り替える場合の注意点を書きます。
とはいっても,もうすでに施工例のページにかなり書いておりますから,以下,「外壁塗装の工程」の
中のカラーベスト屋根塗装の部分を工程順に並べますので ごらんください。
(新しいウィンドウで開きます)
[1]高圧洗浄とケレン
[2]トタン部分の錆止塗料塗りとカラーベストの下塗り(&屋根塗装に適した季節)
[3]上塗り1回目
[4]上塗り2回目
[5]「縁切り」について(&施工前後)
・・・ということで,以下,少々補足です。
カラーベストの塗り替え後のトラブルでよく聞くのが,「早期の剥がれ」と「塗ってからの雨漏り」
です。
「早期の剥がれ」に関しては,【十分な高圧洗浄】と【下地が乾燥状態での塗装】が行われていれば,
そうそう簡単には剥がれないと思うのですが,洗浄をしない業者や,ものすごくあっさり洗浄を
済ませる業者もいるようです。
経験上,【戸建住宅の屋根と外壁をキッチリ洗浄するには ほぼ1日かかる】と私は思いますが,
【1日で足場とシートをかけて屋根と壁の高圧洗浄まで終わらせるのが当たり前】の業者もザラにいる
ようですし,【午前中に洗浄していたかと思ったら,午後にはもう塗り始めた業者】を実際に見たこと
もあります。
屋根の洗浄に限らず,どの程度が“適正な施工”なのかは,“結局,業者次第”ということになってしまいますし,
工事価格とも関連してきますので,見積の段階で“どの程度の業者なのか”を確認しておくことをおすすめします。
工事に取りかかってから気付いても手遅れです。(その業者は“そういう”業者ですから)
下記は「YouTube」にアップした「カラーベスト屋根の高圧洗浄」の動画です。
次に,「塗ってからの雨漏り」について。
私は見積にお伺いして「知り合いのお宅で雨漏りしたので,カラーベストは塗らなくていいです。」
と言われたことが何度かあります。
また,当店HPをご覧になった方から「カラーベストを塗ってから雨漏りするようになったのですが」
というメールも届いています。
この雨漏りは塗装後に塗料で詰まった重ね目を切る=「縁切り」をしなかったせいだと思います。
「縁切り」とは何か,以下に写真と図で御説明いたします。
下の写真は,最もスタンダードなタイプのカラーベストで,2005年1月の現時点では一番多く
普及しているものだと思います。
これは↓10年ほど使われて取り外したカラーベストです。
上半分ホコリがこびりついているところは重なっていた部分で,そこに4つの釘穴が開いてます。
下の写真のように,塗装した後も重ね目に隙間が開いていれば「縁切り」は不必要です。
しかし,このように↓隙間なく くっ付いてしまった場合は「縁切り」しなければなりません。
塗り終わってから「縁切り」するまでの間に雨が降った場合,赤い矢印で示した横方向の合わせ目
から入った雨水が内側で溜まっていて,「縁切り」すると流れ出てくることがあります。
断面図にするとこうです ↓
カラーベストを下地に止めている釘は防水シートも下地板も貫通しています。
下の写真は屋根裏を撮ったもので,カラーベストの内側に雨水が溜まると,釘のところから雨水が
滴り落ちるそうです。
また,雨漏りに至らなくても,重ね目の隙間を確保しておかないと通気性が妨げられ,屋根材裏側
の結露水が蒸発できなくなって下地板が腐る原因になるとのことです。
さて,ちょっと細かい話になりますが,私の経験では,【塗装した2枚の板の塗装面を重ねて置いて
おくと,塗装してから2日くらい経っていても塗料が完全に乾燥した状態ではないため,くっ付いて
しまいます】。
ということは,カラーベスト屋根を塗り終わったその日や翌日では,せっかく「縁切り」しても,
また くっ付いてしまうと思います。
なので,塗り終わってから「縁切り」するまで,なるべく日にちをおきたいと私は思います。
でも,塗ってくっ付いているところをそのままにしておく間に雨が降ることもあります。
この矛盾をどうするか?ということで,当店ではこのような↓塗り方をしています。
重ね目にはハケで必要最小限の塗料を確実に塗り,ローラーで塗る時は重ね目に当てないように
気を付けて転がします。
しかし,ハケは使わずに,このように↓ローラーを縦方向に動かしてグイグイグイグイと塗る業者を
私は何度も目撃しております。
ローラーだけでばんばん塗る方が当店のような塗り方よりも断然仕事が早い(=儲かる,または,
安くできる)わけですが,塗料を重ね目に押し込むようなものではないか?と私は思います。
それに,塗料が重ね目に溜まれば溜まるほど後で「縁切り」が難儀になります。
「縁切り」は1回塗るよりも時間がかかりますし,重労働です。
手の平にマメができたり,血が出るほど指の皮を擦り剥いてしまうこともあります。
そこで,「ローラーやハケでなく,吹き付けで塗装すればよい,それなら「縁切り」しなくても
大丈夫だ」という話も聞きますが,私の想像では,しっかり膜厚が付くように塗ったら 吹き付けで
塗装しても重ね目が くっ付いてしまう場合もあるのではないかと思います。
論より証拠で試してみたい気もしますが,当店の営業範囲である神奈川・東京の住宅地では近隣へ
塗料が飛散してクレームになる可能性が高く,無理です。
ここまでしっかり読んだ方,『塗ってもいいけど,必ず隙間を開けておけ』なんて,ちょっと無茶な品物だと
思いませんか?
ペンキ屋としては,是非とも,塗装後の「縁切り」が不必要な形状のカラーベストを開発してほしいです。
と,思っていたら,その後,「タスペーサー」という画期的な縁切り部材が発売されました。
「タスペーサー」については「DIY外壁塗装」のこのページをごらんください。
それから,「縁切り」ができないと思われる形状のカラーベストがあり,
その場合には塗らない方が良いのではないかと思います。(当店では辞退します)
下の写真は築10年の北側斜面で,トタン部分は塗装しましたが,屋根材は洗浄のみ行いました。
(マウスポインタを乗せると施工後の写真に変わります)
■ セメント瓦,モニエル瓦
どちらも様々な形状のものがありますが,塗装により仕上げられているため,次第に塗装が劣化して
色褪せたり,塗装が剥げたりしてきます。
そのまま放置しても雨漏りが起こることはないと思いますが,美観の維持・向上のために塗替える
ことがあります。
ここでの注意点は,やはり,【十二分な下地調整】と【下地が乾燥状態での塗装】でしょう。
それから,特に書いておかなければならないことがあります。
「モニエル瓦」「スカンジア瓦」「パラマウント瓦」などとよばれる「乾式コンクリート瓦」の場合,
製造時の表面処理が特殊なため,「セメント瓦」や「カラーベストコロニアル」と同じ塗替え工程・
塗料ではダメです。
これを知らずに塗替えが行われた結果,早期に塗装が剥がれてしまいクレームになった事例がかなり
あるそうです。
「セメント瓦」と「モニエル瓦」の見分け方については,下記の塗料メーカーのHPが詳しいです。
水谷ペイント株式会社 (製品情報>屋根用塗料>乾式洋瓦塗り替えシステムのご案内 スラリー強化工法)
統計をとったわけではないので私の主観ですが,神奈川県横浜市に所在する当店の営業範囲内では,
瓦といえば,「釉薬瓦」「陶器瓦」「いぶし瓦」といった塗替えが全く不要な“窯で焼いた瓦”が
圧倒的に多く,セメント瓦もモニエル瓦もあまり見かけません。
セメント瓦はかなり古いお家にかなり古いタイプのものが“遺っている”という印象で,乗っただけで
ばりばり割れそうな感じのものがたまに目につく程度,塗替えるよりはカラーベストコロニアルなど
他の屋根材で葺き替えてしまうケースの方が多いと思います。
また,モニエル瓦は電鉄系のディベロッパーが分譲住宅で採用している以外には皆無に近いです。
なので,実は残念ながら,私はどちらも塗替えをした経験がありません。
ということで,
モニエル瓦の塗替え施工例では,私が知る限り,愛知県の塗装店「天野塗装」の工事記録が最高です。
(天野塗装トップページ>塗装と塗料>塗装>屋根の塗装>乾式洋瓦の塗装)
御自宅の屋根がモニエル瓦の方,ぜひご覧ください。
なお,余談ですが,
つい最近まで私はセメント瓦とモニエル瓦に対して【新築時に「焼瓦」より安いとしても,築後に
美観維持のため何度も塗替えるとしたら,結局高く付くではないか?】と その存在理由に疑問を
感じていましたが,『自宅の新築時にあえてセメント瓦を選んだ』という九州にお住まいの方と
メールでやり取りしてナゾが解けました ↓
> 九州では、焼瓦にはそれほどこだわりがなく、
> むしろ、台風対策のために、焼いてひずんだ焼瓦より
> 型枠どおりの隙間の少ないセメント瓦が一般的です
> そのかわり、葺き替えは20年以内に行われているようです
また,最近,ある展示会で屋根用塗料に強い塗料メーカー「水谷ペイント」のベテラン営業マンの方から
伺ったお話では,『焼瓦には等級があり,ハイグレードなものは歪みが少ないけれども,高価なので,
一般住宅で使われることはほとんどない』とのことです。
何でも奥が深いですねぇー。
私の知らないことがまだまだたくさんあります...(^-^;)y-~~~
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