【素地】そじ
モルタル,コンクリートなどの素材そのものの表面が露出している状態を指す。
【下地】したじ
既存塗膜があり,素材そのものが露出していない状態を下地という。
素地や下地の状態が塗装の仕上りに悪影響を与えないために行う作業を素地調整(そじちょうせい)・下地調整(したじちょうせい)といい,具体的には,ケレンなど問題部分を除去する行為と,パテ付けなど問題部分を隠すために何かを付加する行為がある。
【塗膜】とまく
塗料を塗ることによってできる膜を塗膜とよぶ。
【旧塗膜】きゅうとまく
再塗装工事の際,既存の塗膜を「旧塗膜」とよぶ。まだ十分な密着を保っている場合を「活膜」(かつまく),そうでない場合を「死膜」(しまく)という。死膜は除去するが活膜は残すのが通常の塗替えである。
【ケレン】
「clean」を語源とする言葉で,塗装面を清浄にすること。鉄部の場合,1種から4種までの定義がある。錆びや付着しているゴミなどをサンドペーパーやワイヤーブラシなどで取り除く4種ケレン,さらに,電動工具を併用する3種ケレンまでは,活膜を残す。2種ケレンは狭所や窪み以外,活膜も除去する。1種ケレンは既存塗膜を100%除去する理想的な処置であるが,現場施工では種々の制約があり実行困難である。戸建住宅の塗り替え工事では4種ケレンもしくは3種ケレンが一般的。
軽度のケレンを「目荒らし(めあらし)」「足付け(あしつけ)」とよぶ場合もある。
鉄部,木部の塗り替えや雨樋の塗装においてはケレンを省略すると剥がれやすいため,必須の工程である。
参照:「塗替えQ&A」素材別・部位別の注意点/鉄部/ケレン
参照:「塗替えQ&A」素材別・部位別の注意点/木部/ケレン
参照:「DIY外壁塗装」43通目(雨樋の塗装)
【剥離剤】はくりざい
既存塗膜(旧塗膜)を剥がすために溶解・軟化させる薬品。用途によって,多くの種類がある。
▼ 写真は木製玄関ドアに剥離剤を塗付後,浮き上がった塗膜をヘラで取り除いている様子。
【養生】ようじょう
モルタル等が乾燥するまでの時間を置く,という意味でも使われるが,塗装工事の場合の養生は塗装しない部分や後の工程で塗る部分を粘着テープやビニール等でカバーする工程・作業を指すことが多い。「マスキング」ともよぶ。
【吹き付け塗装】【吹付け塗装】【吹きつけ塗装】ふきつけとそう
塗料を霧状,あるいは粒状に飛ばして付着させる塗装方法。使用する塗装器具を大別すると,空気圧で塗料を吹き飛ばす「エアスプレー」と,塗料そのものを加圧して吹き飛ばす「エアレススプレー」に分けられる。いずれの場合も,先端工具は「ガン」とよぶ。
【刷毛塗り】はけぬり
ハケで塗料を塗るという,いたってシンプルな塗装方法ではあるが,使用する塗料の種類や塗装する対象物によって,様々なサイズ,材質のものがある。刷毛を動かした跡を「刷毛目(はけめ)」とよび,これを極力目立たなくさせる,あるいはきれいに揃えて仕上げるには熟練を要する。
【ローラー塗装】ろーらーとそう
塗料を含ませた円筒を塗装面で回転させて塗付する塗装法。
ローラーの表面が羊毛状のものは「ウーローラー」「ウールローラー」とよばれ,芯の表面から毛先までの長さ(毛足)でおよそ3種類に分類できる。「短毛ローラー」は毛足4〜5mmで,鉄扉の塗装など,仕上りの平滑性を重視する場合に使用する。「中毛ローラー」は毛足13mm程度で最も多用される万能型である。「長毛ローラー」は毛足20mm以上で凹凸面の塗装に使用する。
また,マスチック塗材,単層弾性塗料,微弾性下塗材など,高粘度=どろどろの塗料により波形の模様を付け加える塗装を行う場合に使用する“へちま繊維状”のスポンジのローラーは「多孔質ローラー(たこうしつろーらー)」「マスチックローラー」「パターンローラー」「砂骨ローラー(さこつろーらー)」など,いろいろなよび方をされている。
そのほかにも,プラスチック製のものや金属製のものなど,用途に応じてさまざまな種類のローラーがある。
【だめこみ】【ダメコミ】【だみこみ】
ローラーで塗装する場合に,窓廻りや入隅を刷毛塗りで先行すること。
刷毛で境目のラインを描くような場合にも「だめこみ」とよぶ。
▼ 写真はALC面の塗り替え作業中で,窓周りの他,ALCパネルに刻まれた溝と
ALCパネルの継目の溝(目地)を「だめこみ」している様子。
▼ 写真は天井面と外壁との境目を「だめこみ」して描いている様子。
ちなみに,このような境目を「見切り(みきり)」とよび,職人の技量と心構えが露呈する。
【タッチアップ】【タッチラップ】
「touch up」。局部的な補修塗りのこと。工事の最終段階で塗り落とし(=塗り漏れ,塗り忘れ)の補修塗りを行うことを「だめ直し(だめなおし)」「だめ拾い(だめひろい)」という。
【希釈割合】きしゃくわりあい
【希釈率】きしゃくりつ
シンナーまたは水を加えて塗料を薄める割合のこと。塗料のカタログでは,%による表示,または,1缶に対する希釈材の量が記載されている。薄めずにそのまま塗る塗料もあるが,多くの塗料は適度に薄めて塗るように作られており,薄め過ぎも濃過ぎも仕上りに悪影響が及ぶ。職人の間では,塗料をネタ,粘度をコミとよび,粘度が高い場合は「ネタのコミがいい」と表現する。逆に,粘度が低い場合は「ネタがシャブイ」と表現する。
【標準塗付量】ひょうじゅんとふりょう
参照:「塗替えQ&A」塗装工事の手抜きをチェックする方法は?/標準塗付量
【工程間間隔時間】こうていかんかんかくじかん
異なる塗料を塗り重ねる場合に,置くべき間のこと。(例:下塗と上塗の1回目の間隔時間)
【工程内間隔時間】こうていないかんかくじかん
同じ塗料を重ねて塗付する場合に置くべき間のこと。(例:上塗の1回目と2回目の間隔時間)
なお,塗料のパンフレットに記載されている工程内間隔時間,工程間間隔時間,指触乾燥,最終養生の時間は,気温20度,湿度65%を基準にしており,温度が低い場合や湿度が高い場合には より長く時間を置く必要がある。
【中塗り】なかぬり
塗装は通常複数の工程を経て仕上げられる。下塗り用の塗料を塗ることを下塗り(したぬり),中塗り用の塗料を塗ることを中塗り,上塗り用の塗料を塗ることを上塗り(うわぬり)・トップコートという。
下塗り後に,上塗り用の塗料を2回塗る仕様の場合には上塗りの1回目を中塗りとよぶ場合がある。また,仕様によっては下塗りを2回行う場合や中塗りを2回行う場合もある。
【指触乾燥】ししょくかんそう
指で触っても塗料が手に付かない程度の乾燥状態を指す。しかし,指触乾燥の段階では表面が乾いているだけで内部は未乾燥の場合があり,工程内間隔時間や工程間間隔時間を無視して塗り重ねるとシワや泡の発生などトラブルが生じることがある。
【最終養生】さいしゅうようじょう
粘着テープによるマスキングを行っても問題ない程度に塗料の乾燥が進むまでの時間を指す。
【目止め】めどめ
塗るものの表面が粗い場合や,木材やALCのように微細な穴がある素材の場合に,その表面を埋めて平滑にすることをいう。
【節止め】ふしどめ
マツやスギなど木材の種類によっては節からヤニが生じて塗装の仕上りに悪影響を及ぼす場合があるので,それを抑止する下塗りを行うこと。ヤニ止め処理。
【基層塗り】きそうぬり
【模様塗り】もようぬり
「吹き付けタイル」など,複層仕上げ塗材の場合に,主材(中塗り)を2度塗り重ねる際の1回目を「基層塗り」「地吹き」「ベース吹き」「主材塗り1回目」といい,全面にまんべんなく塗材を吹き付けることを指す。その後,大きめの粒を適度な密度で吹き付けることを「模様塗り」「玉吹き」「主材塗り2回目」という。
低予算な新築工事では「玉吹き」のみで「地吹き」が省略されてしまうことが多いのが実状と思われるが,「玉吹き」のみで済まされてしまうと最低膜厚(一番薄いところの膜厚)が不足するため,仕上がりが劣るばかりか素地の保護機能において支障が生じる(特にその耐久性が塗装に頼るALCの外壁塗装では致命的)。
▼ 写真は改修による新規のモルタル面に「吹き付けタイル」の主材の吹き付け作業中のもの。
水色に着色した主材で「ベース吹き」を行ったのち,赤く着色した主材で「玉吹き」を行った。
【増塗り】ましぬり
仕上りや耐久性の観点から,下地が透けやすいエッジ部などを,ほかの部分よりも1回余計に塗っておくこと。
参照:「塗替えQ&A」素材別・部位別の注意点/鉄部/増し塗り
【可使時間】かしじかん
2液形塗料を混合してから使用できる制限時間を「可使時間」あるいは「ポットライフ」とよぶ。気温によって変動するので注意。
【熟成時間】じゅくせいじかん
2液形塗料のなかには,混合した後,一定の時間を置いてから使用するように規定されているものがあり,その時間を「熟成時間」とよぶ。
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