【溶剤】ようざい
塗料を希釈する(薄める)液体のことを「溶剤」という。一般には「シンナー」を指し,各塗料に応じた多くの種類がある。汎用のシンナーで希釈する塗料もあれば,その塗料専用のシンナーが設定されている塗料もあり,組合せを誤るとゼリー状に固まったり,分離したりするなど,トラブルが生じる。
塗料は何で希釈するかによって,おおむね下の表の3種に分類できる。
強溶剤系塗料 |
「ラッカーシンナー」等,強い臭いのあるシンナーで希釈 |
弱溶剤系塗料 |
いわゆる「ペンキ」を希釈する「塗料用シンナー」で希釈 |
水性塗料 |
水道水で希釈 |
「強溶剤系塗料」は「ラッカーシンナー」「ウレタンシンナー」「エポキシシンナー」など揮発性や臭気が強い溶剤で希釈する塗料である。
「弱溶剤系塗料」は灯油に近い「塗料用シンナーA」で希釈する塗料であり,「NAD形塗料」,「ターペン可溶形塗料」,「非水エマルション塗料」ともよばれる。
「水性塗料」は水で希釈する塗料であり,その成分に「VOC」(揮発性有機化合物)を含むものもあるが,溶剤系塗料に比べると臭気が少なく,ほぼ無臭のものもある。
求められる仕上りや施工する環境への配慮により使い分ける。
【2液形塗料・2液型塗料・(2液性塗料)】2えきがたとりょう
別々に缶詰めされた「主剤」と「硬化剤」または「A液」と「B液」など,2つの液体を規定の割合で計量混合してから使用する塗料。計量の手間がかかる,混合してから使用できる時間に制限があるなど,希釈するだけで使用できる「1液形塗料」に比べ作業性では劣るが,合成樹脂の系統と溶剤が等しい場合,性能的には「1液形塗料」よりも「2液形塗料」の方が優れている。(例:ターペン可溶1液形シリコン < ターペン可溶2液形シリコン)。なお,2液形の塗料は2つの液体の化学反応により想定された性能を発揮する塗料であるから,計量には秤を使用するのが当然であるにも関わらず,“作業性向上”のために,目見当やカンで配合を行うズサンな職人も多く,ひどい例では「硬化剤」を入れずに捨ててしまう業者の話を聞いたこともあるので注意を要する。
参考:「YouTube」で公開している動画「2液形塗料の配合」
【OP】【OP】【op】おーぴー
【SOP】【SOP】【sop】えすおーぴー
オイルペイント,油性塗料の略号で,俗に「ペンキ」とよばれる。本来のOPは植物性の油で希釈する塗料であり,乾燥が遅いため,現在はほとんど使われていない。その「OP」に代わって使われているのが「SOP」(合成樹脂調合ペイント)である。鉄部の塗装などで「SOP」が現在でも図面で指定されていることが多いが,「安い」「塗りやすい」ということ以外にメリットは無い。内部の塗装であれば「SOP」でも十分な場合もあるが,外部では耐候性を考慮する必要があるので,耐候性のレベルとして「ウレタン樹脂塗料」以上の塗料を採用されたい。近年,住宅の塗替え工事でかなり普及してきている「2液形弱溶剤ウレタン」(ターペン可溶2液形ウレタン,NAD2液形ウレタン)と「SOP」との価格差は1缶で数千円程度であり,差額は微々たるものであるが,耐候性においては少なくとも2年以上の差がある。
【EP】【EP】いーぴー
エマルションペイントのこと。(「AEP」はアクリル樹脂エマルションペイント)。厳密には外装用の水性シリコン樹脂塗料などもEPであるが,塗装職人の間では,内装用の水性艶消塗料を指すことが多い。スタンダードな製品としては「ページ/神東塗料」「Hiビニレックス/日本ペイント」「ビニデラックス/関西ペイント」などがある。耐洗浄性や抗菌性など,さまざまな機能が付加されてバリエーションが広がっており,最近では,シックハウス症候群に対応するための内装用水性塗料として,「エコデラックス/関西ペイント」「ノボクリーン バイオ/大日本塗料」といった低VOC塗料・ゼロVOC塗料が登場している。
【エポキシ樹脂塗料】えぽきしじゅしとりょう
密着性・耐磨耗性に優れるといわれるエポキシ樹脂を配合した塗料。下塗塗料・錆止め塗料として,また,内部通路・工場などの床面コンクリートの磨耗による粉塵の発生を抑える防塵塗料として使用されている。
【VP】【VP】ぶいぴー
塩化ビニル樹脂塗料のこと。耐薬品性に優れているため,ガソリンスタンドの塗装に用いられることの多い塗料。非常に溶剤臭が強く,一昔前までは,これを浴室の壁面の塗装に使用して中毒死する例があった。最近では使われることは少ない。
【フタル酸樹脂塗料】ふたるさんじゅしとりょう
図面上では「FE」「FE」と表記されることもある。SOPに比べ乾燥が早いため塗りにくいが,平滑性に優れ肌が良いので,内装の枠廻りなどの仕上げに使われることが多い。製品としては,「ネオアルキコート/川上塗料」「ハイシルク/日本ペイント」などがある。
【アクリル樹脂塗料】あくりるじゅしとりょう
塗料の主成分である合成樹脂がアクリル系の塗料のこと。グレードは下の表を参照。
【ウレタン樹脂塗料】うれたんじゅしとりょう
塗料の主成分である合成樹脂がウレタン系の塗料の一般的な呼称。正統的製品の正式名称はポリウレタン樹脂塗料。グレードは下の表を参照。
【シリコン樹脂塗料】しりこんじゅしとりょう
塗料の主成分である合成樹脂がシリコン系の塗料の一般的な呼称。正統的製品の正式名称はアクリルシリコン樹脂塗料。グレードは下の表を参照。
【フッ素樹脂塗料】ふっそじゅしとりょう
塗料の主成分である合成樹脂がフッ素系の塗料のこと。グレードは下の表を参照。
【耐候性】たいこうせい ≒【対候性】?
陽射しや雨など,紫外線・熱・水分等の影響を受ける外部での自然の環境下での耐久性のこと。塗装の耐候性はその主成分である樹脂の系統により決まるといわれており,一般的に,アクリル系よりウレタン系,ウレタン系よりシリコン系,シリコン系よりフッ素系が高耐候である,ということになっている。各樹脂の系統にそれぞれ強溶剤系塗料,弱溶剤系塗料,水性塗料が存在するほか,多種多様な製品が存在し,樹脂の系統による単純なランク付けは価格と一致しない場合がある。具体的には,「弱溶剤シリコンより高い強溶剤ウレタン」や「弱溶剤アクリルより安い水性シリコン」が存在するので,選択の際は注意されたい。
外装用上塗塗料の合成樹脂の系統による分類
|