●工事中に気付いたことは,遠慮せずに現場の責任者に尋ねましょう。
少々煙たがられたとしても,工事が終わってからモメることになる
よりはマシです。
「明らかに塗っていない」「見るからに仕上りがヒドイ」というような場合は論外として,上塗さえ
してしまえば,そこに至る過程は隠れてしまいます。
しかし,塗り替えはただ単に色を付けるだけでなく,下地の補修や養生を含め,下塗りから仕上に
至るまでの各工程にはそれぞれ意味があり,美観の維持向上と素材の保護という塗装の機能を発揮する
ためにはきちんとした作業が不可欠です。
以下に,主なチェックポイントをあげておきます。
【1】下地補修/ひび割れや欠損を処置しているか?
状態によっては,塗る作業よりもはるかに時間がかかることもありますが,適切な処置が大切です。
塗り終わってもひびが残っているようでは工事をした意味がありません。
【2】ケレン/塗る部分の清掃をしているか?
鉄部や木部を塗替える場合には,ホコリやゴミ,錆び,浮き上がっている古い塗料の膜などを
十分に取り除くことが必要で,これを「ケレン」といいます。
また,錆びや剥がれがなくても,上に塗る塗料の密着を高めるため,サンドペーパーなどで
全面をこすって細かいキズを付ける「目荒し」(あるいは「足付け」)という作業が必須です。
何もせずにいきなり塗ると剥がれやすいです。
【3】養生/塗らない部分を汚さぬようカバーしているか?
「養生」というのはシートを敷いたりビニールを貼ったりして塗装しない部分を覆うことです。
ローラー塗りでも細かい飛沫が生じ,飛んでしまったら後で落とすのはタイヘンです。
【4】希釈割合/塗料を延ばし過ぎていないか?
塗料はそれぞれ希釈する割合が決まっており,カタログに明記してあります。
必要以上に薄められた塗料は想定された性能を発揮できません。
【5】塗り回数/所定の回数を塗っているか?
何回塗るのか,見積の時点で確認して明文化しておくべきです。
数度の塗り重ねの場合,工程ごとに色を変えてもらうのが手抜きを防ぐ最も有効な方法です。
【6】塗装間隔/塗り重ねの適正時間は守られているか?
「下塗の上に上塗を塗る」場合のように違う塗料を塗り重ねるまでの間隔時間を「工程間間隔」,
「上塗1回目の上に2回目を塗る」場合のように同じ塗料を塗り重ねるときは「工程内間隔」と
よび,気温20度を基準にした時間がカタログに載っています。
不十分な乾燥状態で塗り重ねると発泡など,トラブルが生じることがあります。
【7】塗付量/塗料の使用量は適正か?
上記【4】と【5】が守られているのであれば,それなりの量を使用するはずですから
極端に少ない場合以外は,あまり神経質になる必要はありません。
(塗装工事の場合,工事金額の大半が人件費なので,材料をケチるよりも工期が短縮できる
手段の方がはるかに手抜きの効果?が高いです)
でも,どのくらいが「極端に少ない」に相当するのかを知っていただくため,一応,計算方法を
載せておきます。
塗料のカタログには「標準塗付量」の記載が必ずあり,
「塗付量(kg/m2/回)」というのは「1m2 を1回塗った場合に必要な量」です。
例えば,150m2 の外壁を「0.15kg/1m2/回」の塗料で1回塗装する場合には,
150×0.15=22.5kg の塗料が必要ということになり,2回塗るのならその2倍,45kgです。
1缶15kg入りの塗料であれば,45kg÷15kg=3缶必要になるということです。
但し,
新築の場合にはこのような↑計算による予測から大きくズレることはあまりありませんが,
塗り替えの場合には凹凸の有無・大小,吸い込みの度合など,下地の種類や状態によって
所要量がかなり前後します。
さて,チェックポイントを書いてから言うのもナンですが,施主さんや管理者が工事中に
「手抜きかどうか」を逐一完璧にチェックすることは事実上不可能だと思います。
(「塗替えQ&A/Q.30/外壁塗装工事の施工管理方法は?」参照)
疑ったらキリがありませんし,職人がその気になれば,戸建住宅の施主さんはもちろん,
現場監督レベルの人をごまかすくらいカンタンです。
塗り替え工事は,クルマや冷蔵庫など,完成品の購入とは全く違います。
現場での,職人ひとりひとりの手作業の積み重ねによって完成してゆくものですから,
きちんとした作業をしなければ,きちんとした仕上がりは得られません。
同じ塗料を使っても,職人の違いにより,仕上がりに大きな差が出る場合もあります。
そして,どの程度の施工を“標準”とするかは職人に指示を与える親方の裁量であり,業者の質です。
発注後にチェックすることを考えるよりも,発注前・見積もりの段階で業者の質を見極める
ことが大切です。
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