M様
これまでMさんからメールが届いたペースからして,今回は異例に間隔が遠いので,
もしかしたら怪我でも?と心配してお電話【編註:7日15時】したのですが,
『いやー,夜,投光器で照らしながら突貫工事やってたんで,疲れてメールできなかったんですよ』
とのこと,とりあえず外壁塗装は完了という御報告のメールも届いて安心しました。
しかしですね,
> 夕方日が暮れてから電気点けて無理やり (どうも、これも失敗のようですが><;
と書かれておられる通り,外部塗装は照明の明かりだけだと,どうしても塗り落としが
出来てダメなんです。
それに,
> 写真の緑テープは、塗り落ち(フィラーが見える)部分です。
> 仮チェックで、後日塗るつもり(塗料があればwーー;)
って,アナタ,ほんとに上塗2回塗ったんですか?
って,疑念が沸くのであります(笑)
同色で2回塗りで2回とも同じところを塗り落とすというのはかなり確率が低いですから。
まあ,御自身のお家なので,よしとしましょう。
> 養生外しました。
> ・・・・ん〜、以外にオチが多いのに orz
> なんとなく、わかります?
> 吹き付け壁だし、こう養生との境が失敗してるのが...(泣)
> この辺は、サイディングなら多少違うでしょうけど、最初の吹き付けの業者の施工の悪さが、
> 後々まで響くものだなと...
> (塗装業って、先人の出来・不出来でも仕事の効率違うだろうなっと><;
これはたぶん,このページ↓
http://www.sone-tosouten.com/03sp/m0312/06.htm
の2番目の写真のようなコトだと思います。
おっしゃる通り,先人がアバウトだと非常に迷惑します。
本来必要無いはずの削り取りを行えば,削りカスを掃除する必要も生じて2重苦であります。
また,塗るところならば削り取って塗れば修正可能ですが,
アルミサッシにはみ出して付いているような場合,無闇にガリガリやってしまうと
サッシがキズだらけになるので,たいていは諦めざるを得ません。
なので,不作法で心無い職人のイタイ仕事は,以後,家を壊すまでその所業が遺ることになります。
※ペンキ屋の符牒では,雑・ヘタクソ・悪い・馬鹿を「イタイ」と形容します。
その反対は「シカツ」(=丁寧・上手い・良い・美しい)と言います。
> 直しだけでも、これほど手間取るものだなと(簡単に日が暮れました。)
そうなんです。
外さないで養生して済ませるのに較べたらかなり余計に手間喰います。
当店が今施工させていただいているお家も,これから復旧作業に入るのですが,
電灯線,エアコン配管カバーの他,今回は横樋も全部外しちゃったんで,
やはり軽く1人工はかかるかと思ってます。
換気口の,このタイプの樹脂製フードは年数が経つと表面がガビガビに荒れてきますよね?
当店の場合,状態が悪くなければ最後にクリーム色で塗りますけど,
ガビガビのときは施主さんにお話してステンレスのフードに交換します。
> 後からいずれは取り替える物・取り替えられる物(雨樋・配管等)へは、
> 塗料の付着は気にせず行こうと話ましたが、
> それ以上に付着が多く中々上手くは行かない物と、落ち込み中です。
養生の重要さを実感していただけたと思います。
外壁塗装の耐久性には関係ないのですが,通常の神経の人間なら,
壁がキレイになると,こういうのが結構気になるわけです。
> 色々失敗もありますが、全体的には大変満足してます。
> 日が暮れ雨の中なので、写りがイマイチかもしれませんが、
なんだかんだと,ケチ付けてますけど,
一般の方が,ここまでやったらもう十分ではないでしょうか。
ヘンな業者に塗らせるよりもはるかに上出来と思います。
完工したら,施工前写真と同様の天気の同じ時間帯に,同じアングルで写真撮って送ってください。
「マウスポインタを乗せると施工後の写真に変わります」っていう定番,やりますので。
それから,『電車男』くんもお手伝いしたんですね。
今回の工事は,たぶん,彼の思い出にも残ると思います。
顔写るとまずいからあっち向け,というお父さんの声が聞こえそうなポーズの写真ですが,
こっち向きバージョンの写真もあれば,送ってください。
CDに焼くときに入れ換えますから。
> 塗装しながらの、休憩はつねに家の壁を見てたりしてました。
> 一人満足に浸ってましたです。 ← ここ女房にも突っ込まれた^^;
仕上りに近付いてくると,私もそうです。
やってる本人が満足する(満足できるかどうか)というのはすごく重要だと私は思います。
いろいろわかっている上での満足ですから,単にキレイになったという満足とはレベルが違います。
できればそれを施主さんと分かち合いたいと,私は思うのですよ。
ちなみに,過去,DIY塗装に私が結末までお付き合いした4名の方のうち1名の方は
WEB上にほとんど登場していませんが,
テキトーに何度か塗り重ねて表面がやや「かりんとう」状態になっていたトタンの塗り替えを行い,
ケレンでたいへん苦労された末,最後にこういうメールをいただきました。
> 「トタンを張替えた方が・・」と言われた理由がはっきりと分かりました。
> 確かに新しいトタンも良いのですが、きちんと色塗りをしたトタンは
> 手が掛かっているので美しいものだと思います。
この方の悟り?の深さに感銘しました。
さて,本題に戻ります。
> ◎変成シリコンを昨日夕方シーリングしましたが、固まってなく塗料が塗れませんでした。
> この時期固まるのに24時間ぐらいはかかるものですか?
この時期だと,夕方シーリングしても夜間気温が下がるので,翌朝ではまだ硬化してないでしょう。
芯まで硬化するには,2日以上かかるかと思います。
触ってもねばーっと手に付いてこない程度まで硬化すれば塗装はできますが,
シーリングが硬化収縮して塗膜が割れることがありますので,
塗装は3日以上置いてからにしたほうが良いです。
でも,10日以上経って完全硬化してしまうと,塗料が密着しにくくなります。
> ◎凄い満足級の外観リフォームしたので、
> 破風と軒裏と鉄部(出窓の上部分・台所の出っ張り屋根部分・
> カラーベストの枠?上の写真の屋根の白部分)も、後々やろうかな?と思ってます。
> 塗料の推薦をお願いしたいです。(これって、すげ〜面倒ぽいですよね)
> 水性か1液性ぐらいで(2液ってやつ?硬化剤混ぜるのは多分無理なので^^;)
> ネタにシンナー混ぜるぐらいまでの物で、推薦塗料あれば教え戴きたいです。
当初,今回は外壁塗装だけ,とのことでしたが,やはり,外壁塗り終わると,そうなりますよね。
以下,ざっと御説明いたします。
【軒裏の塗装】
ベニヤ板でしょうか?それともケイカル板(硅酸カルシウム板)でしょうか?
築9年ではベニヤ板を使っていることは考えにくく,あまり傷んでいないと思いますので,
艶消の弱溶剤アクリル樹脂塗料の直接2回塗りが定番です。
代表的なものとして「ビルデック(赤缶)/大日本塗料」がよいでしょう。
軒裏の巾×総延長で面積を出し,×0.3kg位必要だと思います。(←2回塗りで)
缶を開けて十分に撹拌し,希釈は5%位,塗り重ね乾燥時間は2〜3時間,
塗る前に80番くらいのサンドペーパーで全面をざっと擦ってラスター刷毛でホコリを払ってから
ハケと中毛の棒状ウールローラーで塗ってください。
使い終わったローラーは柄から外して缶に入れて密閉しておけばまた使えます。
【破風の塗装】
木製のようですので,1液形塗料限定で考えると,
弱溶剤1液形ウレタン樹脂塗料「1液ワイドウレタン破風用/スズカファイン」同等品
または,合成樹脂調合ペイント「SDキング/関西ペイント」同等品のどちらかです。
前者のタイプはツヤのもちは良いでしょうが,“剥がれるまでの年数”という意味でのもちは
後者と大差ないと思います。
で,ウラ技として,後者を,「塗料用シンナー」ではなく,「プリマ油」で希釈して塗ることを
おすすめします。
「塗料用シンナー」で希釈するよりも塗膜が柔らかくなり,もちが良くなるはずです。
破風板・鼻隠板の巾×総延長で面積を出し,×0.3kg位必要だと思います。(←2回塗りで)
1回目だけは(吸い込ませるため)シャブめのコミで塗ってください。
塗り重ね乾燥時間は16時間,つまり,2回目は翌日以降です。
触わっても手につかない「指触乾燥」の状態で無理矢理塗り重ねてはいけません。
(乾いてからシワがよったり,剥がれやすくなります)
話が前後しますが,木部の下地調整については「Q&A」の1番の直下の
「木部塗装塗り替え編」を熟読してください。
要は「ケレン」です。
最低限,剥がれかかっている塗膜を皮スキで落としたあと,
80番のサンドペーパーで全面を擦ってください。
力を入れてしっかり擦っても落ちなければ「活膜」と看做して残すのが通常の塗り替えです。
サンドペーパーには主に,「紙のもの」「耐水紙のもの」「布のもの」があります。
外部のケレンの場合には「布のもの」をおすすめします。
ケレンが済んだら塗る前にラスター刷毛でホコリをよく払ってから塗ってください。
なお,木部用の下塗塗料を使うと簡単に吸い込みが止まるのでキレイに仕上りますが,
外部では剥がれやすいので,もたせたいなら決して使ってはいけません。
上塗を直接2回塗りして,吸い込みが止まらなければ,さらにもう1〜2回塗り重ねてください。
なお,軒裏を塗るときには仕上っている外壁や窓を汚さないように養生した方がよいです。
外壁の一番上,廻縁のところから足場の踏板にかけてビニールを斜めに渡してください。
(作業の邪魔にならないように&風で塗装中の軒裏にビニールが張付かないように)
軒裏の塗料も破風板の塗料も,床面のコンクリートに垂れると水性塗料よりも落としにくいので,
養生をキッチリと行うことをおすすめします。
ここからは,ちょっとわかりにくいかもしれませんが,とりあえず文章で書いてみます。
[1]軒裏だけを先に施工する場合
廻縁から養生する。
→軒裏を2回塗り終えてから養生を撤去する。
→後日,破風と廻縁を2回ハケ塗りする。
[2]軒裏と破風・廻縁を同時進行で施工する場合
外壁の最上部から数ミリ下げて(=廻縁のちょっと手前から)養生する。
→廻縁にも(軒裏側に)テープを1本張って養生する。
→軒裏を2回塗り終えてから廻縁のテープを外してしばし乾燥させる
→破風と廻縁を1回ハケ塗りする。
→後日もう1回破風と廻縁をハケ塗りする。
廻縁を塗るときに,その塗料が“軒裏に付かないように”するには
先に仕上げた軒裏にテープを張る方法もありますが,
軒裏の塗料が剥がれてしまう場合やテープの微妙な浮きから廻縁を塗った塗料が軒裏に
にじみ出ることがあるので,廻縁のラインはハケで描いて(ダメこんで)ください。
また,外壁はガサガサした模様が付いているので,テープが密着しないため,
テープを頼りに廻縁の直線を出すのは無理です。
従って,やはり,ハケで直線を描いてください。
MさんのDIYの場合,軒裏と破風の塗装をするには足場の移動が伴うと思います。
[1]と[2]どちらが効率がよいか,検討してみてください。
【鉄部の塗装】
全面にサンドペーパーを当ててケレンしたあと,
錆止塗料+上塗塗料2回がセオリーです。
が,特に錆びがヒドイという状態ではないと思いますし,DIYですから,
上塗塗料は1回でもよいでしょう。
錆止塗料は,わけのわからない安物ではなく,「シアナミド」を使ってください。
上塗塗料は塗りやすさの点では合成樹脂調合ペイントがベストなので,
「SDキング」を塗料シンナー希釈で塗っても良いのですが,
もちを考えると,最低でも1液弱溶剤ウレタンを使ってほしいです。
「エコレタン/関西ペイント」など,塗料メーカー各社から出ています。
塗り肌がゴテゴテにならない程度に,なるべく希釈を少なくして塗ってください。
シンナーを20%も30%も入れてすいすい塗ってしまうイタイペンキ屋も多いようですが,
それでは塗る意味がありません。
しかし,「唐草」も塗るとなると,足場の移動がタイヘンですね...。
以上のように,足場を何度も移動しながら,軒裏・破風・鉄部の塗装をキッチリ行ったら,
これまでと同じくらいの時間がかかるのではないかと思います。
どうします?
全部やり遂げるまでお付き合いしますよ(笑)
最後に,
外壁塗装が終了した今になって言っても遅いのですが,
単独販売されているらしい“ミクロなピンポン球”見つけました。
http://www.unique-shohin.com/MHCB.htm
http://www.mmm.co.jp/smd/products/additive_agent/Glassbubble.html
添加すると,仕上りや作業性が変わるでしょうし,
劣化したときにどうなるかがわからないので,結構冒険ですが,試してみたい気はします。
それでは,また。
[041]2005.11.08(月)01:38
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