一般住宅外壁塗装工事の見積書の読み方
他社の見積書を目にする機会がたまにありますが,各社まちまちの書式を用いているのが実状であり, 『外装トップコート塗り足場込み 一式 ○○○円』という無茶苦茶なもの(←実話)は論外としても, 当然行うべき工程に関しての記載が無いもの,どんな塗料を塗るのかが全く書いていないもの,面積が 5割以上も違うものなど,同業者の私が見てもよくわからないもの,アイマイなもの,意味不明なものが 少なくありません。 「見積書は立派でも工事は手抜き」あるいはその逆もありますから,見積書だけで業者の良し悪しを 判断することはできませんけれども,見積書がしっかり作られているかどうかチェックすることは, 着工後のトラブルを防ぐ意味で,業者選びの基本であると,私は思います。 |
以下に【破風は窯業系部材,軒裏はセメント系の板,2階の外壁はモルタルでリシン吹付塗装仕上げ, (※以下に記載してある塗料・材料の選択は“例示”です。“実際には曽根塗装店で使用していない塗料”も例示してあります。) |
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○○邸 外部塗装工事 見積書 / 内訳明細書 |
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名称(作業項目・部位)
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仕様(作業内容・仕様材料)
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単位
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1
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足場=仮設工事 | 棚足場 |
「m2」
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足場は「m2」で記載するのが普通です。 正規の算出法では,建物の横巾と高さに1m程度を加えた寸法を元に計算しますが,業者によって 一口に足場といっても,いろいろです。 ・「単管抱き足場」 ・「棚足場」( 「ブラケット足場」「ビケ足場」「一側足場」) ・ 「ビデ足場」 足場は高圧洗浄時の水しぶきや塗料の飛散を防ぐシートをかけるためにも必要ですから, きちんとした足場には,揺れや歪みを抑えるための「筋違(すじかい)」と「火打ち」, |
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足場は純粋に工事のためだけに必要なもので,建物に残りませんが,飛散防止,作業効率,そして, なお,車の入らない細い道の奥や階段の上に建物があり車両を横付けできない場合には別途「運搬費」が 「足場サービス」というパターンがよくありますが,単なる“演出”と考えるのが妥当です。
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2
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足場シート養生 | メッシュシート |
「m2」
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全面を覆う場合には,足場と同じ「m2」数で記載するのが普通です。 シート無しで塗装工事を行って隣接する建物や自動車を汚してしまうトラブルはよくある話です。 |
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3
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施工面洗浄 | 高圧水洗(100〜150kg/cm2) |
「m2」
または「一式」 |
塗装する部分の合計面積と同じ「m2」数で記載するのが一般的と思いますが,面積が少ない物件では, 外壁のベタ面積(窓やドアなど「開口部」を除外しない面積)で記載している例や 戸建住宅の外壁塗装の塗替え工事で使用されている機械は最大圧力が「100〜150kg/cm2」クラスの なお,“吹き付け塗装用”の機材「エアレス」を使用して“水を吹き付けているだけ”の写真を載せて
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4
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サイディング面 シーリング補修 (既存撤去打ち替え) |
プライマー塗付の上, 1成分形変成シリコンシーリング 「スーパーワンLM/ハマタイト」 |
「m」
または「m2」 または「一式」 |
外壁がサイディングの建物で,継ぎ目のシーリング(コーキング)がかなり傷んでいるにも関わらず, 既存のシーリングを撤去せずに,上から重ねて充填することは「打ち替え」ではなく「増し打ち」 《※ サイディングのコーキングについてはこのページもご覧ください》
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5
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養生(マスキング) |
「m2」
または「一式」 |
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外壁の面積と同じ「m2」数で記載する場合,「一式」にする場合,色々です。 外壁塗装の準備として必須の工程であり,戸建住宅でも丸1日はかかるので,あって然るべき項目 例えば窓を養生する場合,テープとビニールで全面を覆うのが普通ですが,ガムテープ1本張るだけで
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6
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下地調整 | モルタル面/クラック:シーリング充填 /欠損:樹脂モルタル補修 サイディング面/クラック:エポキシパテ補修 |
「m2」
または「一式」 |
外壁の面積と同じ「m2」数で記載する場合,「m」や「ケ所」で記載する場合,「一式」にする場合, 状態によっては塗るよりも時間がかかる場合もありますが,この項目が無い見積書が少なくないです。 ひび割れたりや欠けたりしているところがある場合には,それをどうするのか,確認しましょう。
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7
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破風板,化粧胴差 窯業系部材 |
下塗:弱溶剤2液形下塗材 「リフノン/スズカファイン」 |
「m」
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上塗:弱溶剤2液形シリコン塗料×2回塗り 「2液ナチュラルシリコン/恒和化学」 |
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細長いものは「m2」ではなく,「m」で記載するのが普通です。 モルタル外壁の建物で,破風や軒裏もモルタルで外壁と同じ仕上が施されていて同じ色の場合には
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8
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軒裏 ケイカル板 | 弱溶剤アクリル樹脂塗料×2回塗り 「ビルデック/大日本塗料」 |
「m」
または「m2」 |
出巾が1m以上ある場合を除き,「m」で出すのが普通です。
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9
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1階外壁 サイディング | 下塗:弱溶剤2液形下塗材 「リフノン/スズカファイン」 |
「m2」
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上塗:弱溶剤2液形シリコン塗料×2回塗り 「ファインシリコンフレッシュ/日本ペイント」 |
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外壁は,窓やドアなど,「開口部」を差引いた面積を「m2」で記載するのが普通です。
「開口部」を差引かない外形面積で記載し,そのかわりに「養生」や「下地調整」を込みにしたりする
外壁素材に凹凸の彫り込みがある場合や深い模様がある場合などは“表面積”が増え,平らな面に比べ
「上塗」は通常,同じ塗料の2回塗りですが,「上塗」の1回目を「中塗」と表現する場合があります。 「下塗」「中塗」「上塗」を1項目ずつに分けて単価が記載されている場合もあります。
塗り回数が記載されていない見積書はザラにありますが,論外と言わざるを得ません。 使用する塗料の名称・メーカーが見積書に記載されていない見積書もよくありますが,やはり論外です。
《※ サイディング外壁の塗替えについてはこのページもご覧ください》
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10
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2階外壁 モルタル面 | 下塗:微弾性下塗材 「ホルダーG2/関西ペイント」 (※1.0kg/m2程度,パターンローラー塗り) |
「m2」
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上塗:水性反応硬化形シリコン樹脂塗料×2回 「アクアシリコンAC2/関西ペイント」 |
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厚みを付ける仕様の場合,塗付量も記載されていることが望ましく,「1.0kg/m2」という場合, ちなみに,一般に『弾性ローラー仕上』といわれる仕様があります。 150m2×1.2kg/m2÷15kg/缶=12缶 で12缶必要です。(過剰に希釈して薄く塗ればこの半分以下で済み,仕事も早く終わります) 《※ モルタル外壁の塗替えについてはこのページもご覧ください》
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11
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庇 トタン面 | ケレン:全面サンドペーパー研摩 |
「m」
または「m2」 |
下塗:弱溶剤2液形エポキシ錆止塗料 「エポックマイルド#2000/水谷ペイント」 |
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上塗:弱溶剤2液形シリコン塗料×2回塗り 「パワーシリコンマイルド2/水谷ペイント」 |
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「ケレン」というのは英語の「clean」を語源とする塗装用語で,浮き上がったり付着が弱くなったり 錆止塗料にも上塗塗料と同様,多くの種類があり,用途,性能,価格が異なりますから,ただ単に また,錆止塗料は「全面に塗る」のか,「錆びているところだけ拾い塗りする」のかで価格が違います。 外壁以外の部位の塗装を仕様の記載無しに「一式」にしている著しくアバウトな見積書が少なくないので 《※ トタン・鉄部の塗替え,ケレンについてはこのページもご覧ください》
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12
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諸経費 |
「一式」
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内訳は,作業の過程で発生する産業廃棄物の処分費,現場での万一の事故に対応する保険費用,
「経費」や「利益」は記載されていなくても見積金額に必ず含まれていると考えるのが当たり前です。
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以上は,私が妥当と思う書式であって,絶対にこうであらねばならない,というものではありません。
業者により,いろいろな考え方がありますので,あなたが納得できる業者を選んでください。 |
※ このページは,エクスナレッジ社「月刊 建築知識」編集部からの御依頼により
曽根塗装店店主である私が執筆し,同誌2002年8月号に掲載された原稿の一部を 元に,一般の方向けの修正加筆を行ったものです。 |